歯周病の原因論

歯周病はプラーク細菌によって発症し、徹底したプラークコントロールによりある程度改善する可能性のある病気です。
しかし特定のグラム陰性菌とスピロヘータが原因となって進行する歯周炎は激増している。歯周病の感染論を、病原菌と宿主の抵抗力との関係で論じるだけにとどまらず、歯周病原菌が全身の健康を害する事についての知見を含めて上記の文献には紹介されています。

インベーダー細菌とまで言われています。

歯周ポケット内インベーダー細菌
歯周病原性細菌は、インベーダーとして侵入し、お互いにコミュニケーションを取りながら集団となって歯周局所に住み着く。

上記論文 歯周病予防からのヘルスプロモーションより引用

A.歯周病の原因
病原菌はどこまで明らかにされたか
健康を脅かす潜在的病原性

目次

1.歯周病は細菌感染症である。

歯周病は嫌気性菌を中心とする明らかな感染症である。
発症、進行を規定する危険因子(risk factor) を把握することによって、その治療から予防までを考えるようになってきている。

歯周病の危険因子(risk factor)

  • 高齢化
    • 老化した歯肉線維芽細胞は若い細胞に比較して、歯周病原性内毒素刺激によって下記の炎症性因子が産生される。   
      • プロスタグランジンE2
      • インターロイキン-41β 破骨細胞活性化因子
      • インターロイキン-6 骨吸収を起こす因子
  • 喫煙
    • 1 好中球機能を低下させる
    • 2 歯周組織の微小循環を傷害する
    • 3 唾液分歩型IgAの分泌を低下させる
    • 4 歯肉線維芽細胞を傷害する
  • ストレス
    • NK細胞の活性を低下させる
  • 糖尿病
    • 感染防御機能の低下
  • 骨粗鬆症
    • 骨代謝障害

2 歯周病原性細菌

歯周病細菌の出す毒素
細菌の産生する毒素には2種類ある。

1.外毒素—菌体外に分泌される毒素
2.内毒素—グラム陰性菌の外膜構成成分

外毒 素は菌が菌体が位に出すタンパク質からなり、ほとんどのものは、熱によって簡単にこわれる。単位あたりの毒性は強い(μ・量で作用する) 。
内毒素は、グラム陰性菌の細胞構成成分からなる。

病的歯周ポケットでは、「Porphyromonas gingivalis と Treponema denticola が共存している。
さらに深い歯周ポケットでは、Bcteroides forsythusが加わがる。この3種の混合感染こそ最も病原性が強い」
歯周病原性グラム陰性桿菌はすべて リポ多糖 (lipopolysaccharide,LPS)からなる内毒素を有する。
その内毒素は炎症の誘発と歯槽骨の吸収を引き起こす。

内毒素の持つ生理活性

  1. 発熱性がある。
  2. 血管障害作用がある。
  3. 血液を凝固させる。
  4. 局所及び全身の出血、壊死に関わる。
  5. アレルギーや自己免疫疾患に関与する抗体の産生をもたらす。
  6. 細胞から炎症性サイトカインの萌出を促す。
  7. 補体を活性化させ炎症を起こす。
  8. 骨の吸収を起こす。

各型の歯周病の主な原因菌

  • 成人型歯周炎  
    • Porphyromonas gingivalis
    • Accinobacillus actinomycetemcomitans
    • Prevotella intermedia
    • Bcteroides forsythus
    • Eikenella corrodens
    • Treponema denticola
  • 活動部位
    • Porphyromonas gingivalis
    • Campylobacter rectus
    • Prevotella intermedia
    • Bcteroides forsythus
  • 難治性部位(再発性部位)
    • Porphyromonas gingivalis
    • Bcteroides forsythus
    • Fusobacterium nucleatum
  • 若年性歯周炎
    • Accinobacillus actinomycetemcomitans
    • Capnocytophaga菌種
  • 急性壊死性潰瘍性歯肉炎
    • Prevotella intermedia
    • Treponema denticola
  • 妊娠性歯肉炎
    • Prevotella intermedia
  • 思春期性歯肉炎
    • Prevotella intermedia

3.全身の健康を害する歯周病原菌

歯周病原菌ならびに歯周病原菌が産生する内毒素は歯肉縁上皮から血流 に入り込んでいく。

  1. 循環器系への影響
    • 細菌性心内膜炎 健常者の血流へのプラーク細菌の進入は様々な防御機構により速やかに血流中の細菌は駆逐されるが、入り込む菌数が多かったり、抵抗力を 失っている場合などは敗血症になってしまう。
    • 口腔レンサ球菌による敗血症は、癌、糖尿病、免疫不全のある患者さらに弁膜症のある場合や高齢者などの場合は、要注意である。
    • Accinobacillus actinomycetemcomitans は、外毒素である白血球毒素(ロイコトキシン)をもっていて、血流に入り込んでも容易に殺菌されず、弁膜に 付着定着して心内膜炎を起こす。
    • 歯周病がある場合には、歯磨き中、咀嚼時(食事時)にも歯周局所の細菌が血流中に入り込み菌血症を起こしている。
  2. 呼吸器感染症への影響
    • 口腔の細菌が知らない間に吸引され、肺炎を起こす場合がある。
    • 誤嚥性肺炎は食物をうまく摂取できないことによっても起こる。
    • 老人性肺炎起炎菌は歯周病原菌である。
  3. 糖尿病、骨粗鬆症の増悪因子
  4. 妊娠トラブル
  5. 病巣感染症の原病巣となる歯周病

参考ダウンロード文献 [PDF] 歯周病予防からのヘルスプロモーション

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